一行詩「颱」
嘘つきだから雨雲は低くして出かける
この道を歩けば片側ばかりが重たくなる
ねぇ、作ろうとした思い出なんてないよネ
目も鼻も口もウソ
この顔をうつす水たまりを踏んづける
いつだって僕は僕との間でうわ目使いだ
でんでん虫さん もう少しだけ歩いてから決めようか
そこいら中の痛さを集めて顔を造る
平成四年七月十五日発行「颱」№282