榮井豊 遺作
最後の入院中の作品です
。
どこの空から眺めても 夏の空だし 夏の雲だし
︵
最初の入院手術前︶
心に残る一句でもあれば それだけでありがとう
︵
十一月の入院直後っ
て︶
友達がまた来てくれた病院の枕うらがえす
︵
友人の見舞いの後で︶
家族であることの誇りと喜び
つなが 広が
っ
ていくっ
ていく︵
初めての家族写真の年賀状に寄せて︶
一生の内何度か絶対勝たねばならないケンカがある
また病気につかま 24時間がやたらと長い
っ
ちまっ
た真夜中の病院の音は 騒がしくても寂しい
待つ事に慣れなければなんにもできない時代が来たね
病床の自分の影を切
っ
ているこの街を駆け抜けていく灯がある
君たちの生命をおもう ルミナリエ
サボり癖 去年の辰がヘビになる
添い遂げて共白髪眼下には明石海峡
意味もなく爪をとぐ 魔女にでもなる気か わが子よ
わがままを言い尽くすまで暮れぬ海
魚には魚の事情があ
っ
てびくの中毒婦だと呼ばれて久し蛸を釣る
ち
ょ
うちょ
うも上に舞い下に舞い今日の僕も不機嫌だ︵
二月二日︶