一行詩「颱」
「食う為に」の時間には分厚い手袋を着る
手のまめが苦笑いしている 独り言がまた増えた
ちゃんと生きてこなかった 今日も言葉をさがしてる
つり上げた目を横に置き嬰児を抱き上げる
相変わらずだね お互いさまさ 友は嬰児を膝に抱く
無遠慮な平穏 無防備な幸福 歯が痛い
傲慢よ不遜よ我が手に帰れ カード切る
その鞄はまだ軽い 横断歩道でステップを踏む
平成三年十月十五日発行「颱」№273