一行詩「颱」
妻が「痒い」という 暮らしがここにある
「正しい」にアイロンをかけて着せてくれる
抜けた前歯まだ生えぬか 息子の笑顔撫でている
小さな丸い瞳にはビックリがそのまま入って行く
母の髪が白くなったのはいつからだろうか
少し痩せたみたいだ 父は腰を延ばしている
目と鼻と 口も耳もここまでおいでこの木の花の下に
また途中で引っ返し蜻蛉に笑われた
平成三年九月十五日発行「颱」№272