一行詩「颱」
ひざを抱えたまま歩いていた
理由(わけ)が要るんだ 林檎かじる
見付かってぎごちなさ 宙を動く
擦れ違うごとの一瞥 息を止める
狂えない 独白(ひとりごと)殖えて行く
わかろうとしていたころ 白い足
蟻の穴見つめていた 帽子被り直す
去年の便箋今年の封筒 切手が見付からない
平成二年十月十五日発行「颱」№261