フリ
 
 

 
自分が何者であるのかを知る為に書いているんだ
何時か見つけ出し
た自分を表現しきる事を夢見て書き続けているんだ
書き始めた頃には
ボンヤリしていたそんな思いが
僕の中でどんどん明瞭なものにな
います
だけど
書けば書くほど
書いたものと書いている自分との間
に横たわる言いようのない違和感が
キリと見えてくるばかりです
 
 
 
 
フリ
句10
 
正誤表
 
 
あれはペンギン
これ電話
君は女で僕は僕
 
時計カチカチ夜もふけて雨と一緒に星も降る
 
ヒトデナシは人でなし
 
喰う僕と喰われる僕
 
晴れてしまえば晴れた日の僕も要る
 
戸惑
手間取
間違いとされる
 
眠れない夜の眠りたい僕
 
支度
何の支度
 
したくない
 
難しく考えている
 
難しくしている
 
未消化の排泄物 僕の愛しさ
 
心配されるのは
かまわれるのも
されすぎると
×
 
妻の目が
×
にならない程度にわがままを言い続ける
 
何が正しいのかなんて考えていると鼻水が出ち
うよ
 
 
 
 
 
書くには客観視しなければならない
客観視したものを抽象化しなけ
ればならない
抽象化したものを象徴する言葉を選び文字になおして表
記せねばならない
つまり
書くと言う事は
自分の見たもの
聞いた
もの
感じたことや思
た事に言葉を選び名づけてやる作業なのかもし
れない
 
 
 
 
フリ
句11
 
作業日報
 
 
ヒトは名づける僕も名づけようとする
 
 
 
 
名づけることで分かろうとする
 
名づけることで分けようとする
 
名づけたことで在ることにする
 
名づけたことで無いことにする
 
名づけることで捕らえようとする
 
名づけることで忘れようとする
 
名づけることで捨ててしまう
 
名づけてしまえば安らかになる
 
名づけた名前に捕らえられる
 
名づけた名前で誤解が生まれる
 
名前の全てを知るわけもない
 
全てには名づけられない
 
てる名前と名づけたものが僕の範囲
 
名乗る
僕の名前は
 
 
 
 
 
 
書いているうちに
言葉は勝手に成長し増殖して
手をつなぎ合い一
つのワ
ルドを形成する
しかも
言葉はそのワ
ルドを確固とするた
めにワ
ルド内でのリアルを求めて変化していく
そして
僕の作品は
僕の文章は
僕の書くもの全ては
そのワ
ルドの自己完結しようとす
る意思によ
て自己完結してしまう
それは一つの虚構となる
 
現実の僕は完結などしていない
答など何も持
てはいないのだ
のに
言葉は完結に向かう
そして
抗う僕を虚構にする
 
 
 
 
フリ
句12
 
抗争
 
 
何処
此処
居る
居ない
 
何を
する
しない
できる
出来ない
 
何時
過去
未来
現実の
 
何故
意味
どんな
思う
感じる
 
誰と
自分
ている
知らない
 
記憶
忘れた
どれを
どれだけ
不安
 
 
書く
それでも
どうしても
 
言葉
どうしようもなく
言葉
言葉
 
 
 
 
 
開き直るしかないのかもしれない
僕には虚構しか書けないと
だけ
僕の書く虚構は
誰のものでもなく僕の中から出てきたものである
ことは確かなのだから
その虚構は嘘とは違う
案外この虚構の中にこ
そ真実があるのかもしれない
 
そして
その真実に突き動かされて
僕は書き続けているのかもしれ
ない
 
 
 
 
 
新年早
屁理屈ばかりこねて申し訳ありません
去年一年ず
と考
え続けていた事だ
たので
一度纏めておきたか
たものです
ただ
これで書きき
たとは
自分でもとても思えませんが
 
今回の表紙は娘
小学1年生
が僕を描いてくれたものです
と親馬鹿してみました
 
では
本年も宜しくお願い申し上げます
また皆様方の益
の御多幸をお祈り申し上げます
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
敬白
 
 
 
平成八年一月十五日
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
榮井